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ヴィクトル・ユゴーの一節が最後に刺さる!『レ・ミゼラブル』感想と見どころ

レ・ミゼラブル:(原題)Les Miserables

2019年 フランス

監督:ラジ・リ

上映時間:104分

鑑賞日:2020/3/18

劇場:シネマジャック&ベティ

 

 

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 今年は最後に印象的な一節で締めくくられる作品が多いような気がしますねぇ。

『ジョジョ・ラビット』のリルケ ⇒ みどりの感想はコチラ

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そして本作もヴィクトル・ユゴーの一節で幕を閉じます

 

そう、このユゴーの有名な「レ・ミゼラブル」と本作は全くの別物ですので誤解無きように。

 

 みどりが幼少期、そのジャン・ヴァルジャンが登場する「レ・ミゼラブル」を、タイトルは忘れてしまいましたが、世界の有名なお話をアニメで子供にも解りやすく語られる番組で紹介された時に、感動してむせび泣いた記憶があります。

 

大人になったら是非原作を読んでみようと思っていましたが、

未だ読んでません…。

 

だってあれもの凄く長いんですよね…?

そんなユゴーの作品とは別物と言いましたが、舞台は一緒なんです。

 

ここはモンフェルメイユというパリ中心部から17km東に位置し、人口は2万7000人。

 

フランスに行ったことの無いみどりは、パリではいつもフランス料理食べていて、英語話せるのにわざとフランス語で返してきて、そこそこサッカーが強くて、女性は皆ソフィー・マルソーみたいという子供並みの知識しか持ち合わせていないので、本作で描かれているモンフェルメイユという場所に衝撃を受けたのですよ。

 

スラムというわけではないですが、結構多民族社会で、貧困層も多く住み、警察もそんなに頼りにならず、丸山ゴンザレスさんがよだれを流して取材に行きそうな場所なんだなぁと。

そんな本作のあらすじからどうぞ。

 

 

あらすじ

 地方から異動してきたステファン(ダミアン・ボナール)は犯罪対策班に配属され、クリス(アレクシス・マネンティ)とグワダ(ジェブリル・ゾンガ)のチームに加わった。

3人でパトロールをするうちに、複数の勢力が互いに緊張関係にあることを察知する。

ある日、ロマのサーカス団からライオンの子供が盗まれたことがきっかけで、自称“市長”の一派とロマ達が一触即発の危機に瀕する。

3人は衝突を回避する為に捜査を開始するが、彼らのある行動がきっかけになり、事態は取り返しのつかない状況になってしまう…。

 

 

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森千香子さんのキーワード解説が簡潔で解りやすかったです。

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パンフの表と裏は正にパリの陰と陽

主要キャスト

ステファン:ダミアン・ボナール

異動してきて犯罪対策班(BAC)に所属。正義感の強い性格で、クリスとグワダの強引なやり方に難色を示している。

 

クリス:アレクシス・マネンティ

班長。モンフェルメイユに精通していて、事情通。互いの勢力のバランスを保っている。

*本作では脚本も担当

 

市長:スティーブ・ティアンチュー

市長という名は自称で、揃いのベストを着た配下を従えている自警団長。市場の顔役的な存在。

 

サラー:アルマミー・カヌテ

ムスリム同胞団の信頼を得ているレストラン店主。元ギャングの親玉。不良少年達の信頼も厚い。

 

 

 

見どころ

ドキュメンタリー風の仕掛けに注目

監督のラジ・リは本作が長編デビューになります。

この方以前2005年にパリ郊外で起きた暴動事件(警察に追われた2人の少年が変電施設に逃げ込み、両名とも感電死してしまった痛ましい事件がきっかけ)のドキュメンタリー映画を制作しました。

この経験からか冒頭ずっと背後から、それも手ブレ上等なドキュメンタリー的な撮影方法に没頭してしまうんですよねぇ。

 

物語は2018年FIFAワールドカップで優勝したフランスの歓喜から始まります。

チラシの画像にあります凱旋門前での狂乱。ここにも既にチラッと登場人物が出ているのですが、ここまでは冒頭で書きました子供並みのおフランスイメージで物語が歩き始めて、次のシーンでグッとダークな、あまり一般の旅行者が踏み込んではいけないエリアにジャンプする構図、それでドキュメンタリーチックな描写にはフランスの陰と陽を感じざるをえないんですよ。

 

クリスという男

爆発寸前の勢力間には常に緊張感が漂います。その均衡が崩れた時には誰にも止められない嵐が訪れるのは言うまでもなく、そこから物語にターボがかかるのですが、まあ「やっちまったな」と言われてしまう人物が付き物ですよねぇ。

本作ではアレクシス・マネンティ扮するクリス。もうこの男が本当にムカつくんですよ!

あ、これみどりの中では最高の褒め言葉ですから。

観客に憎悪を抱かせるほどの演技力って中々出せないと思うんです。

 

最近では『デトロイト』でのウィル・ポールターが大のお気に入り。『ミッドサマー』でも最高のクズ男を演じてくれて大満足の俳優さんでッす。

その彼並みに我々を怒りのデスロードに導いてくれるのがこのクリスという男。

あの森羅万象を解りきった冷酷な目つきに、軽薄そうな口元。薄ら禿げた髪型も全部含めて我々に拳を握らせてしまう存在感は凄まじいと思います。

このアレクシス・マネンティさんは本作で脚本も担当。いやあ多才ですよねぇ。

 

そんな彼でも一旦家庭に帰ると優しいパパなんですよ。慎ましくも一家の大黒柱。あんな事もこんな事もしちゃうけど、全ては家族を守るためというね。このシークエンスは本当に巧妙でした!

またタイミングが絶妙。監督のセンスがビカっと光る素晴らしい箇所だと思います。

 

 

まとめと総評

ラストはですね、結構衝撃的なシーンで幕を閉じるのですが、これをハリウッドで作ったら絶対に違う風にエンディングを迎えるんでしょうね。

予告編を初めて観た時は、なんかフランス映画っぽくなく、ゴリゴリのハリウッド映画かなと思ったのですが、終わり方は欧風に最高の状態でエンドロールが流れます。

そんな本作の評価は、、、

 

☆☆☆☆

 

そして…。最初に書いたある一節が最後にぶっ刺さり、この作品の意味を改めて反芻するチャンスを与えてくれるのです。これも監督の優しさと捉えてしまうみどりでした。

 

 

友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない。

育てる者が悪いだけだ

 

ヴィクトル・ユゴー

 

 

結構な頻度で当ブログにて勧められている作品。

一度記事書かないとですかねぇ  ↓

 

 
 
こちらがユゴーの「レ・ミゼラブル」
実は観たことないです。  ↓
 
 
読まなきゃ読まなきゃと思って幾年月。
定年してからでもいいですかね… ↓
 
 
 

 

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