名もなき生涯:(原題)A HIDDEN LIFE
2019年 アメリカ ドイツ
監督:テレンス・マリック
上映時間:175分
鑑賞日:2020/2/23
劇場:kino cinema横浜みなとみらい
*2020/4/9 加筆しました
みどりが以前勤めていた会社でこんな事がありましてね、
当時その会社は、現在誰もがご存知のある大手企業に吸収合併されまして、経営の過渡期に突入していたんですな。
その親会社の新しいコンセプトを含んだ支店第一号の責任者を任されるという、大変誉れな任務に恍惚と不安を感じていました。
しかし現実は酷いもので、開店1日前になってもパンフ等の宣材資料が届いていなかったり、自販機の設置は済んでいても空き缶処理の手配を忘れていたり、そもそもゴミ出しの許可すらおりていない始末。
この辞令がおりた時は直属の上司に、
『○○さんという(親会社から派遣された人)が全て周りのことはやってくれるから、みどりさんは支店の売り上げに専念するように』
という言葉を頂いていたので、自分もそのつもりでいました。
しかし結果は何の準備もされていない、ただスペースがある場所を提供されたに過ぎなかったのです。
宣伝部の尽力もあり、開店初日に訪れて下さったお客様も多数いてその方々への営業活動をする傍ら、滞っている諸々の下準備に追われ遂に精神が崩壊。
このままでは自分が完全に壊れてしまうという身の危険を感じ、やむなくその会社を自主退職することを決意しました。
この一件から、その会社では10数人規模の『支店開店サポート部』なる部署が発足。
その後の支店開店は実にスムーズになっていったと聞いたのは、みどりが退職して1か月後のことでしたね。
自分の悲痛な叫びと、退職という思い切った決断がその後の組織にとって有益な事になったと自負するようになりましたが、みどり個人には物理的なメリットは何も残りません。でもいいんですよ。本当にあの時は辛かった。
また自分のような辛い目に遭う人がいなくなって、大儀に専念しやすい環境になればそれでいいじゃないですか。
長くなりましたが、本作を観てそんな人生の1ページを彷彿させてくれた本作。
そう!
この作品を選んだのは1月に鑑賞した「ジョジョ・ラビット」の登場人物がドイツ語を話していないという理由で、あまり響かずこちらはどうなのかと観てみた次第です。
舞台はナチスが席巻していた時代なので、感覚的に似ていますし(凄く軽い)
主演はアウグスト・ディールという時点で既に「ジョジョ・ラビット」とは違いドイツ語が期待できます。この俳優さんは「イングロリアス・バスターズ」でヘルシュトローム少佐を演じていた方です。そう、
「3」の指の出し方に注意が必要な人です。
とりあえずあらすじから、
あらすじ
初めて出会った時から惹かれあったフランツ(アウグスト・ディール)とファニ(アウグスト・ディール)は間もなく結婚し、この幸せは永久に続くと思っていた。
時は1939年。
オーストリアの精密な地図にしか載っていない小さな村、ザンクト・ラーデグント。こんな美しい山と谷に恵まれた地にもナチスの黒い影が少しずつ広がり始めていた。
1940年エンス基地での軍事訓練に招集されたフランツは、何か月も愛する家族と離れて暮らす事になる。唯一の心の拠り所は愛妻ファニに手紙を送る事だった。
そんななか、フランスは遂に降伏し、戦争は終結するかに見えた。フランツも待ち望んでいた家族の元への帰還。ファニと3人の娘との家族水入らずの生活が再び始まる。
しかし戦火はやむどころか日に日に激しさを増すのであった…。
主要キャスト
フランツ:アウグスト・ディール
農夫で敬虔なクリスチャン。昔はバイクを乗り回して喧嘩っ早かった不良番長であった。
家族を誰よりも愛している。ヒトラー、及びナチスの思想に同意する事が出来ず、兵役を拒否。そのために非国民として投獄されてしまう。
ファニ:アウグスト・ディール
フランツの妻。フランツが投獄されてからは、反逆者の妻として彼女にも非難の目が向けられてしまう。
見どころ
神々しいにもほどがある風景
本作は監督の作風により、全て自然光で撮られています。美しい自然の山々や妖精が見えそうな小川の風景は、必ず観る者の日頃のせわしなさでささくれだった心を浄化してくれるでしょう。
そして本編の至るところに見える神の存在のメタファーを見逃してはいけません。
常に神の存在を意識しながら観ると作品のメッセージを深く受け取る事ができます。
因みにみどりは無神論者です。(説得力ゼロ)
これぞ究極の交換日記
この「交換日記」という言葉自体死語と化していますが…。とにかく作中、フランツとファニの手紙のやり取りが幾度となく登場するのですが、ここは一門一句胸に刻んで頂きたいです。このやり取りだけを垣間見ても二人の愛の深さを理解する事が出来て、羨むこと間違いなしです。
まとめと総評
結果、登場人物の会話は英語でしたが、周りの声は全てドイツ語でした。これくらいのバランスだと十分当時の雰囲気をリアルに感じる事ができましたよ。「イングロリアス・バスターズ」と同じくらいのバランスでみどりも大満足でした。
しかし、フランツの行動には賛否の声が上がりそうですが、彼の強い気持ちを理解するには並大抵の人間力では太刀打ちできないでしょうねぇ。
そこまで人間ができていないみどりは、常に彼の弁護士が言っていた「カタチだけでも忠誠をしとけ」の言葉に同意していましたよ。
そして見どころにも書きましたが、本当に風景の画が素晴らしいんです。初めて行くバーでこの作品がモニターで流れていたら、必ず常連になってしまいますね!
美味しいお酒を飲みながら鑑賞すると最高だろうなぁと。
話はこれも凄く叙情的で、真っ先に思い出した作品がスティーブ・マックイーン監督の「ハンガー」。こちらをイメージして頂くとよく解って頂けると思います。
という訳で評価は、
☆☆☆
なんだ、言語バランスを評価していたけど「ジョジョ・ラビット」と同じかよ
という声が聞こえてきそうですが、とどのつまり両者はそれぞれの良さと個性があったという訳で。
そして冒頭で話しましたみどりのよもやま話も、本作を鑑賞して頂けたら必ず理解して頂けると思います。
最後に物語を締めくくる印象的な一文を、
歴史に残らないような行為が世の中の善を作っていく
名もなき生涯を送りー
今は訪れる人もない墓にて眠る人々のお陰で
物事が さほど悪くはならないのだ
ジョージ・エリオット
アウグスト・ディールといえばこちら!
登場シーンはわずかですが、この強烈な存在感。
このシーンのせいでみどりは居酒屋で飲み物を3つ注文する際は、指の出し方に気を配るようになったとかならなかったとか…↓
作風のイメージをつかみやすい作品。
長セリフのシーンはいつ観ても圧巻です!↓