Fukushima 50
2020年 日本
監督:若松節朗
上映時間:122分
鑑賞日:2020/3/7
劇場:TOHOシネマズ海老名
なんかこの映画の評価が凄い物議を醸しておりますねぇ。否定派のご意見を拝見する限りですと、なんかプロパガンダだとか、原作者の方への批判だとか、映画そのものの評価はあまり見られないのかなと。
「佐藤浩市熱すぎ!」
とかいう意見は思わずにやけてしまいますが、なんでもツイッター上ではこの作品を巡ってかの糸井重里氏が本作を絶賛したのに対し、有名な映画評論家の町山智浩さんが痛烈に批判されているとか。
そのやり取りをみどりも拝見させて頂いたのですが、過去に糸井さんが知る人ぞ知る忌野清志郎さんの伝説の反原発のアルバム(発禁になりました)を否定した過去が尾を引いていると。
このエピソードはみどりが崇拝している氷室京介のソロ一発目のライブ「King of ROCKSHOW」の浅間高原特設会場にて、氷室さんがMCで語られているのを聞いて当時大変衝撃を受けました。
これに対して当時、糸井さんが芳しくない発言をされているのは全く知らなかったのですが、これほど人々を「本気」にさせる作品もあまり無かったと感じております。
因みにみどりの福島第一原発における知識は、
・ある建屋が爆発した。
・それによって地域住民が避難しなくてはならなくなった。
・下手したらチェルノブイリ原発事故以上の未曽有の大惨事となっていた。
・大学時代の学友が、この事故の半年前に避難区域となった土地に二世帯住宅を購入したが、もう二度と住めない状態に陥いる。しかし毎月“そこそこ”の見舞金が現在でも東電から支払われている。
くらいです。はい、勉強不足だとは自負しておりまして、そんなしがない映画ファンが知識不足の中で鑑賞した本作の感想が今回の記事となっております。
あらすじ
2011年3月11日、午後2時46分。
雪がちらつく福島第一原発を大きな揺れが襲った。
1・2号機サービス建屋の2階にある中央制御室では、当直長の伊崎利夫(佐藤浩市)が原発の緊急停止である“スクラム”を運転員達に指示する。その時同じく、発電所所長の吉田昌郎(渡辺謙)は、免震棟の緊急対策室へ急行、各所の安全を確認するが、大津波警報も発令され、敷地内の作業員たちに避難が呼びかけられた。
やがて、ものすごい高さの津波が海岸に迫り、原発の建屋に激突。建屋地下にも海水が流れこみ、発電機は浸水、停止してしまう。
午後3時40分、SBO(全交流電源喪失)が宣言された。このままでは原子炉の冷却装置が動かず、溶けた燃料が格納容器を突き破り、メルトダウンへと至ってします。
この危機的状況に政府は大混乱。
一刻をあらそう事態に、政府が出した結論は格納容器の圧力上昇を緩め、容器の破損を回避する『ベント』の指示。
電源が失われている状況なので、手動で行われなくてはならない。
伊崎は運転員たちからメンバーを募った。
そのころ内閣官邸では総理にベントの説明が行われていた。
「…の手順でベントを行えば放射性物質を0.1%に抑えられるはずです。」
「“はず”じゃあ不確か過ぎるだろ!!」
「何分…、世界でも例が無いもので…。」
主要キャスト
伊崎利夫:佐藤浩市
事故が起こった1・2号機の当直長。部下からの信頼も厚く、手動ベントを敢行する際は、まず自分が先導を切ると宣言したが、部下達から何かあったら指揮を執るものがいなくなると止められる。
吉田昌郎:渡辺謙
福島第一原発所長。前例の無い大惨事に本店、官邸から矢継ぎ早にしかもちぐはぐな指示に翻弄され疲弊していく。現場の意見を第一に考え、時には本店の命令も背くような大胆な行動にも出る。伊崎とは旧知の仲。
大森久夫:火野正平
管理グループ当直長。現場での経験は誰よりも豊富。ベントの作業に従事する。
前田拓実:吉岡秀隆
5・6号機当直長。持ち場が落ち着いたので1・2号機の作業に合流する。原発を我が子のように思っているエンジニア。
見どころ
これがKADOKAWAの本気キャスティング
佐野史郎、安田成美、萩原聖人、堀部圭亮、平田満、石井正則、田口トモロヲ、段田安則、金田明夫、ダンカン、ダニエル・カールetc。これぞバイプレイヤーのアベンジャーズ!
どんなに邦画に疎い方でも、本作の俳優陣を誰も知らないと言われる方はいないでしょうな。みどり的ベストバイプレイヤーは石井正則さん。決死のベント作業員の熱演は胸を打たれました。アリtoキリギリス時代が懐かしいです。
順撮りの臨場感
本作は綺麗に順撮り(本編と同じ時系列で撮影すること)で撮影されています。これによって登場人物の疲労、ストレスの蓄積もビビットに表現されているわけです。もう吉田所長のストレスは筆舌に尽くしがたい。観ている自分の頭髪も抜け落ちる感覚に襲われます。
それは血尿も出るってもんかと…。
横田基地が撮影に使われるのは…。
なんと1961年の「モスラ」以来とのこと!ロケハン部隊の苦労も垣間見られます。
そして「スーパーピューマ」という要人専用ヘリも全て本物。佐野史郎さんは役者冥利につきますねぇ。
まとめと総評
いつも苦労するのは現場の人間。みどりも本職において現在進行形でこの憂き目にあっていますよ。本作を観る目的は、当時あそこでどんな事が起こっていたのかを知る事。全てが事実でないにしろ十分伝わると思うんですよね。
一応作品冒頭に「事実を元に…」と注釈が入ります。
そして、今会社で働いている人も、
「ああ、自分の上司に観せてあげたい」
と自分の環境に置き換えて本作を鑑賞するのもアリだと思います。
冒頭の評価の話ですが、もう一つ驚いたのは、かの「キネマ旬報」の評価。
いつも三人の評論家の方々がレビューの文章を寄稿されているのと同時に、☆5で満点の評価を付けていらっしゃいます。
本作の評価はなんと最低点。三者三様で申し合わせたように☆1評価。
しかもその号(3月下旬号)は表紙から「Fukushima 50」を特集している号なんですよ。
それとこれとは別ってな感じで「キネ旬」の忖度しない姿勢に少し感動しました。
そんなキネ旬の漢気評価はコチラ
一方みどりの評価はというと、
☆☆☆☆
ええ、ええ、高評価を付けさせて頂きました。
それでもあの自衛隊員の、
「国を守るのが自衛隊ですから!(キリ)」
ってとこと、やたらダニエル・カールが「トモダチ」を連呼するところなどは観ていてコチラが照れてしまいましたが、スペクタクルの観点で凄く楽しめました。
「キネ旬」の最低点をくだしたお三方が、本作の横で以前投稿させて頂いた「初恋」の評価もされています。
見てみると、、、、うん、この方々とみどりはあまり合わないようです。
映画の批評って難しいですね…。
「初恋」の感想っす↓
本作の原作です↓