許された子どもたち
2020年 日本
監督:内藤瑛亮
上映時間:131分
鑑賞日:2020/9/10
劇場:シネマ ジャック&ベティ


こんにちは!支配人のみどりです。
ニュースで報道される事件をテレビや新聞で見聞きして、それに対して憤りを感じる事もしばしばありましてね。
最近ではあの上級国民なる人が母子を車の事故で殺めた事件などは最たる例。
言うに事を欠いてあの事故は車の欠陥によるものだと弁明された映像が報道された時は、にわかに信じられなかったですよ。
この感情自体が誰もが心に内在している“正義感”たるものだと思いまして、それは時に残虐性を生むのが恐ろしい。
永井豪先生の名作『デビルマン』の最終回をご存知ですか?
あれはアニメ版と原作版は大いに相違がある事で有名で、そこで訴えているのは本当に残酷な悪魔は実は人間の心にあるとありました。
自分が正義だと思っている瞬間、人間は悪魔にもなりうる。それを思い出させる作品が今回の『許された子どもたち』。
『ミスミソウ』で有名な内藤監督のインディーズ作品です。
あらすじ
泥に汚れ血だらけの子供を母親が抱きしめる。その子は小学生だが抱きしめられている間親指をしゃぶっていた。
時は流れ、その少年は中学生になって不良グループのリーダーとなっていた。名前は市川絆星(上村侑)同級生の倉持樹(阿部匠晟)を日常的にいじめていて、ついに絆星は樹を殺してしまう。
警察に犯行を自供する絆星だったが、息子の無罪を信じる母親の真理(黒岩よし)の説得によって否認に転じてしまう。そして少年審判は無罪に相当する「不処分」を決定した。
絆星は自由を得るが、社会はそれを決して許さないのであった…。
主要キャスト
市川絆星:上村侑
小学生の頃のいじめにより、目の下に傷がある。親の前では普通の少年だが友人達の間ではリーダーの存在。倉持樹を手製のボーガンで殺害してしまう。
市川真理:黒岩よし
絆星の母親。いわゆる“うちの子に限って親”で絆星の無罪を頑なに信じている。
櫻井桃子:名倉雪乃
自身もいじめられていた経験があり、絆星を理解しようと努める。
キャロル:日野友和
動画サイトで市川家を特定し、ネットで誹謗中傷を繰り返すインフルエンサー。
見どころ
徹底された調査に基づいたフィクション
本作のベースになっているのが1993年に起きた「山形マット死事件」と2015年に起きた「川崎中1殺害事件」。いずれもいじめがエスカレートして起こってしまった事件です。
これらの事件を緻密な調査に基づいて作られたシーンの数々はドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥ります。
しかしあくまで描かれている事件は物語の“きっかけ”に過ぎないので、本作が訴えている事案はその後にあるのが本作の奥深いところ。
内藤監督の配慮
映画本編のエッセンスとはいささか離れますが、本作に登場している子供たちはほとんどが演技経験の無い素人さん。
彼らに配慮して、撮影前に本作のテーマであるいじめについて徹底的にワークショップを開催してマインド形成から始められたそうです。そして演ずることによってトラウマにならないようにきっちりカウンセラーや臨床心理士の方の協力を得て、撮影の準備にあたったとの事。
美しい仕事をしますなぁと一人感嘆…。
まとめと総評
そんな訳で一概のしがない映画ファンが論ずるには、あまりに重いテーマの本作ですがこれをきっかけに色々考える事が大事だと思う事にします。
さながら上質の道徳番組を観ているようで(賞賛の意味で!)、中学生くらいまではNHKの『中学生日記』を見てはあれやこれやと友人たちと話し合ったものです。
それにしても冒頭でも書きました通り、メディアの報道“だけで”色々妄想するのも危険だという事も本作から読み取れるんですよね。
決して擁護するつもりは無いですが、加害者側の苦悩も確かにあるわけでしてね。
それでは被害者が報われないのも事実ですが、何が正しいのか一種のゲシュタルト崩壊を引き起こすほどのパワーを本作は持っています。
くどいようですがみどりはただの映画ファンなので答えは永久に出ませんが、皆さんも是非鑑賞して考えてみてください。
評価は、、、
☆☆☆
子どもたちの演技は映画ファン全てが許す素晴らしい演技でしたよ!
内藤監督といえばコチラ ↓
漫画が原作となっていますね。
アニメから入った人は原作の衝撃でトラウマになる人多数。
未見の方は是非読んでみて欲しいです ↓