異端の鳥
原題:The Painted Bird
2019年 チェコ・スロバキア ウクライナ
監督:ヴァーツラフ・マルホウル
上映時間:169分
鑑賞日:2020/10/11
劇場:kinocinema横浜みなとみらい


こんにちは!「発禁」と「限定」という言葉に弱い支配人のみどりです。
「発禁」と聞くと一体何が書かれているんだとどうしても気になってしまうんですよね。
日本でも内容に問題があって発禁された漫画も多数あり、それを紹介している本もたくさんあります。
興味を持ってその作品を追ってみると、実は大したことないケースがほとんどで、なんや政治絡みだったり、今では難しくなった表現方法だったりとかね。
物語自体は面白いのになんで世の中から抹消されるのかが理解できないんですよ。
そして今回ご紹介する『異端の鳥』という作品。原作は1965年に世界的ベストセラーとなりましたが、ポーランドでは発禁。
作者自身も後に謎の自殺をしてこの世を去るといったいわくつきの物語となっております。
映画完成までにトータル11年!
資金集めだけで4年を費やし、映画制作権を獲得するまでに2年弱という大作です。
それでは早速あらすじからどうぞ。
あらすじ
東欧のどこかの物語。ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である一人暮らしの老婆がある日病死してしまう。身寄りを失くし一人旅に出る事になってしまう少年。
行く先々で彼を「異物」とみなす周囲の人間達に酷い仕打ちに遭ってしまう。
彼はこれからどんな世界を見るのであろうか…。
主要キャスト
少年:ペトル・コトラール
オリーブ色の肌に黒髪。預かり先の老婆が病死し、家も火事で焼失してしまう。
この日から放浪の旅に出るが、行く先々で大人から酷い仕打ちを受ける。
見どころ
ロードムービーともいえる
本作は章切りのスタイルで、各章のタイトルには少年にまつわる人の名前が付けられています。
もう行く先々でこの少年が酷い目にあっていって、そのスタイルは過酷なロードムービーのよう。そして皮肉なのが、少年は段々戦争の前線に近づいていくのですが、前線に遠ければ遠いほどイジメも酷くなり、戦火が激しい所ほど優しくされるのです。
人間の本質は”暴力”に表れると言いますが、戦争は一周回って人を優しくするのでしょうか。
少年の成長にも注目
虐げられる少年は絶対に自死を選びません。その姿にも胸を打たれるのですが、物語が進んでいく内に明らかに表情が変わってくるんですね。
実はこのペトル少年は本職の俳優ではなくなんと素人さん。
監督の狙いで撮影は順行撮影(物語の進行に合わせた撮影方法)で撮られていてその期間は2年の歳月を費やしています。なので本編で少年は2歳成長していくんですね。クライマックスにある人と出会う時、テーブルのお皿をひっくり返す表情は神がかってます!あの表情はベテラン俳優の域でしたよ。
まとめと総評
3時間弱の長尺で、エロもグロもオンパレード!視覚的精神的にも覚悟が必要な本作。
万人に勧められる作品では決してないですが、作品のバックステージや製作者の想いを知ると映画ファンなら抑えときたい作品でもあります。
内容が過激な為、舞台がどこなのか特定できないように言語はスラヴィック・エスペラント語という人工言語が使われています。
スラヴ系の言語を理解できる方なら誰でも理解できるらしいのですが、この言語が映画で使われたのは史上初との事。
またタイトルにある『異端の鳥』とは本当にうまく付けられた題名だと感じました。あまり深読みしなくても、物語が進んでいくとハッと気付く瞬間が必ずきますよ。
では評価はといいますと、、、
☆☆☆
大ファンであるバリー・ペッパーの軍服姿を久しぶりに観れました!
こちらは原作版。映画版とは結末が違うそうです。 ↓