テアトルみどり座

映画の感想、見どころを気ままに紹介しています。

【スポンサーリンク】

この世はかくも世知辛く、そして優しい『すばらしき世界』感想と見どころ

すばらしき世界

2021年 日本

監督:西川美和

上映時間:126分

鑑賞日:2021/2/11

劇場:109シネマズ湘南

 

f:id:t-midori:20210615064340j:plain
f:id:t-midori:20210615064346j:plain


  こんにちは!支配人のみどりです。

コロナコロナで世界中が混乱している昨今、洋画の大作が軒並み上映延期の憂き目を喰らい続けていますよね。もう二年ですよ

 

正直言って、苦肉の策ともいえる名画の4k修復版にも飽きてきました。

 

普段洋画しか観ないという方もいらっしゃると思いますが、こんな時だからこそ邦画を観なおしてみるのもいいと思います。

今回ご紹介する『すばらしき世界』  面白かった!

初めに評価を言ってしまいますと、文句無しの満点でした。

前回『ヤクザと家族 The Family』(みどりの感想はコチラ)でも満点でしたが、今年は邦画の当たり年になるかもしれませんよ。奇しくも両方アウトローの生きづらさを描いた作品となりましたが。

 

オリジナルコンテンツに拘り続けてきた西川監督ですが、今回初めての原作ありきの作品です。

原作は佐木隆三さんの「身分帳」という作品。1990年の作品ですので、今よりも元ヤクザが社会に復帰するのが困難という訳ではなさそうです。

しかし映画本編の時間はまんま現在。暴対法もバキバキに可動しています。

そこは西川監督の手腕で上手くアレンジされているのです。

 

 

あらすじ

冬の旭川刑務所で一人の受刑者が刑期を終え出所している。男の名前は三上正夫(役所広司)。13年の長い刑期を終え、身元引受人である庄司弁護士(橋爪功)とその妻に温かく迎えられ、長年冷や飯を喰らってきた三上はこみ上げるものをこらえられないでいた。

ちょうどその頃、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)が番組のネタ、社会復帰する元受刑者が住みにくい社会で悪戦苦闘する姿を番組にしようと寄り添ってくる。三上はそのテレビの力を使って、生き別れた母親を見つけてもらう事を条件に津乃田達の要求を呑むのであった…。

 

 

f:id:t-midori:20210615064829j:plain

本作のパンフレット。パンフというよりかは書籍くらい読み応え抜群。

f:id:t-midori:20210615064929j:plain

最近の邦画パンフの傾向なのか台本をそのまま掲載されるようになりましたよね。

 

主要キャスト

三上正夫:役所広司

十代半ばから暴力団と関わりを持ち、最終前科は殺人。若いヤクザをめった刺しにして殺害。

一度キレると手が付けられなくなり、そのせいかかなりの高血圧。曲がった事が許せない性格。

 

津乃田龍太郎:仲野太賀

若手のテレビマン。しかしこの仕事をもうすぐ辞めるつもりでいて、小説家になる夢がある。

 

松本良介:六角精児

スーパーの店長。普通に買い物に来ていた三上を万引き犯と勘違いした事をきっかけに、彼の理解者となる。

 

井口久俊:北村有起哉

ハローワークの職員。三上の職の紹介を懸命にこなす。

 

下稲葉明雅:白竜

昔三上が世話になった暴力団の組長。今は暴対法のあおりをもろに受けて、組織は壊滅寸前。

 

 

見どころ

みんな優しいんです

思えば冒頭の雪のシーン。バス停まで三上を見送りに来てくれた二人の看守さん達から始まっていたのかも。ここから三上の娑婆での生活が始まるのですが、とにかく彼の周囲は優しい人間で囲まれているのです。普通はあんな雪の中でわざわざバス停まで見送ってくれないですよね。

みんな真剣に三上の事を想って、時には厳しい事も言ってくれると。

みどりが一番刺さったのは白竜扮する組にガサ入れが入ったシーン。

姐さんが言った台詞が忘れられません、

「娑婆は我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。そやけど、空が広いち言いますよ。」

沁みました~!

 

 

まとめと総評

この世界は生きづらいけど、あたたかい。

まるでトミー・リー・ジョーンズのCMみたいですが、この言葉が凄くフィットしていると思うんですよね。

とかく真っ直ぐな正義を貫くのには難しい世の中じゃあないですか。

今もテレビを付けただけで、腐った政治家の嫌なニュースが流れ、数年前は開催が決定しただけであそこまで熱狂したオリンピックも色んな醜聞が湧き出てきて、今となっては守銭奴の主催側しか盛り上がっていない状況も垣間見れたりとかね。

 

自分が望む方向に全力で走っていけば、周りも必然的に呼応してくれると感じます。

三上も本編の中で、驚くほど成長(・・と言っていいかは解らないですがもしくは順応と言った方がいいのかな・・)していきます。だから彼を見習ってこの嫌な事だらけの世の中でも自分を信じて闘い続けていって、その先にある幸せを掴めればそれでいいと本作は教えてくれます。

そしてそれが観客全員の胸に刻まれたタイミングで、物語は衝撃の結末を迎えるのですが、この演出が西川監督のセンスが爆発していますので、本編で確認してみて下さい。

 

あと本作の原作は冒頭でも書きましたが「身分帳」。しかし本当にこのタイトルでいいのか監督が悩んだ末、この『すばらしき世界』となったらしいです。

やっぱりこの世界は素晴らしいんですよ。

そう感じるにはやっぱり本人の努力も絶対に必要なのですがね。

評価は最初に説明した通り、

 

☆☆☆☆☆

 

部屋で寝ているだけでは世界は素晴らしくならない!外に飛び出して色んなものに触れましょう!!

 

こちらは本作の原作「身分帳」

佐木さんは「復讐するは我にあり」も有名ですよね。

 

西川監督といえばやっぱりコチラ

思えばこの頃から香川さんの顔は良かった…

 
 

【スポンサーリンク】