無頼
2020年 日本
監督:井筒和幸
上映時間:146分
鑑賞日:2020/12/29
劇場:シネマ ジャック&ベティ


こんにちは!昭和をこよなく愛する男支配人のみどりです。
昭和って落ち着きますよねぇ。みどりが小学生の頃、よく日曜の昼間に70年代の邦画がテレビで放映されてたんです。『トラック野郎シリーズ』とか植木等の『無責任シリーズ』とかね。それをよく観ていまして、古い邦画好きはこの頃から始まってたんかなと。
なんだろ、一種の風俗研究史と申しましょうか。もはや再現不可能な風景が画面にあるだけでワクワクしてくるんですよね。風俗街の『トルコ』の看板なんかいい例でして、他にも『インベーダーハウス』だったり、『ディスコ』なんかも最高です!
今回ご紹介する『無頼』もそんな激動の昭和を色濃く描いた作品です。
紛う事なきヤクザ映画なのですが、切った張ったの極道一直線の内容ではなく、昭和という時代は一体どんな時代だったのかを想起させてくれる一作でした。
井筒監督8年振りの力作です!
あらすじ
1956年伊豆の田舎町。極貧の中、母親の顔も知らずに育った中学生の井藤正治は、朽ちた実家の屋根から銅板を剥がし、アイスキャンディーの売り子をして食いつないでいた。
1963年、ケネディ大統領が暗殺された日、21歳の正治は、兄貴分のヤクザから「シマを持たせてやる」とそそのかされ、ターゲットが巣食うバーへ単身斬りこんでいく。
この件で懲役を受け、シャバに戻った途端またもやヤクザと揉める正治。ケジメとして指を詰める決意をし、もう後戻りはできないと腹をくくるのであった。
主要キャスト
井藤正治:松本利夫
3人兄弟の末っ子。兄・孝の斡旋で、若松組三次団体の組長川野と親子盃を交わす。
佳奈:柳ゆり菜
クラブでホステスをしている時に正治に出会い、そのまま夫婦となる。
仲野俊秋:木下ほうか
民族派活動家。正治の良き友人。
見どころ
昭和という時代を余すところなく堪能
物語の冒頭では街頭テレビで力道山の試合が中継され、その後目まぐるしくパンダ、オイルショック、ロッキード事件、そして携帯電話やレンタルビデオと昭和を彩った文化やアイテムを見せつけてくれます。そして井藤組のシノギも時代と共に変化、カレンダーなんて知る人ぞ知るシノギなんじゃないでしょうか。おしぼりや提灯なんかはメジャーでしたもんね。
高校の頃アルバイトしていた飲食店でこれらをネタに上納金をせびりに来ていたチンピラを思い出してしまいました(笑)。
そしてクライマックス、昭和という時代が終わりかけた頃の井藤組は柔軟に対応するのですが、みどりはなんか猛烈に寂しくなったのですよ。
未来に目を向けて新しい時代をこれから築く活力に満ちた展開のはずなのですがねぇ。
これは観る人によって解釈が分かれると思います。
今の時代希少な井筒作品
スポンサーの顔色ばかり気遣って、自分が撮りたい作品を撮れないポイズンみたいなこの時代、やっぱり井筒監督みたいな映画作家は貴重です。
本作は全編16ミリフィルムで撮影されています。この独特のささくれ具合も昭和イズムで素敵。
そしてこれは本編とはあまり関係ありませんが、撮影には実に1年が費やされたとか。一筋縄ではいかなかった本作の撮影、やっぱり決して作品に妥協しない姿勢がいいじゃないですか。黒澤監督がご生前の頃って結構撮影にウン年かかったというエピソードを聞いたんですが、最近なんてほぼ編集も含めて1か月以内で完成させますもんねぇ。
長く期間を設ければいいとは決して言いませんが、本作のように長くじっくり練られた作品って、自ずと我々に訴えてくる波動が作品から感じられるのですよ。
まとめと総評
北野作品以外のヤクザ映画は久しぶりに観た気がします。
考えてみれば井筒監督の本気ヤクザ映画ってこれが初ですよね。『ゲロッパ!』をヤクザ映画と分類するのは少し乱暴な気がするので、本作が初でいいでしょう(笑)
漢が修羅の場で死闘を繰り広げるといった典型なストーリーではないのでご注意を。
あくまで一つの暴力団の目を通した昭和史という位置づけで鑑賞するのが良いです。
という訳で評価のほどは、
☆☆☆
☆もう一つにしようか大変迷いましたが、柳ゆり菜一人が老けないのに解せなくて今回は3つの評価にさせて頂きます!
井筒監督といえばこちら ↓
紳助さんもお若いですが、木下ほうかさんのデビュー作でもあるんですな。