娘は戦場で生まれた:(原題)FOR SAMA
2019年 イギリス、シリア
監督:ワァド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ
上映時間:100分
鑑賞日:2020/3/28
劇場:シネマジャック&ベティ
未だ収まらないシリアの内戦。
数年前、たまたま視聴した動画に衝撃を受けたみどりは、一時シリア情勢を追いかけていました。
戦争を知らない我々戦後世代は、映画や本の世界でしか戦争を知りません。
ましては敵対するのは同じ国の人って…。
「クラスメートや同僚を、宗教や思想が違うだけで命を奪おうと出来るものか…?」
いくら自問自答しても、みどりの想像力では全く明確に描写できないのが正直な意見。これを「平和ボケ」というのでしょうか。
しかもシリア内戦は、かれこれ10年近くも続いているのですよ。
未曽有の大惨事であった東日本大震災の発生から4日後の2011年3月15日にシリア革命が始まったとされています。
“あの時”からもうずうっと街は凄惨な状況にあるなんて本当に考えられないです。
本作はそのシリア内戦、それも特に戦況が悲惨であった“アレッポの戦い”の渦中に生き抜いたワァド・アルカティーブさんが回していた映像をまとめたドキュメンタリーです。
彼女は戦況が逼迫していく中、学生から結婚して出産までを経験します。
予告編 ↓
あらすじ
2011年3月、“アラブの春”に触発され、民主化を求めることで始まったシリアの平和的デモは、やがて第二次世界大戦後、史上最悪の人道危機と言われるほどの紛争に発展、泥沼の戦争が繰り広げられることになる。
2012年、その波は美しい都市アレッポにも到達する。政府側の攻撃に学生たちは必死の抵抗を試みる。その一人がワァドであった。彼女はスマートフォンとカメラを携え、街の惨劇と破壊をカメラに収め続ける。
2015年9月、ロシアがシリアに軍事介入すると、事態はさらに悪化していく。
そんな中、ワァドは医師を志すハムザ・アルカティーブと出会い、やがて恋に落ちる。
そして二人は結婚、多くの人々が命を落とす中で、ワァドは2016年1月1日、新たな命を手にとったのだ。
娘はサマと名付けられた。アラビア語で“空”を意味する。
主要キャスト
ワァド・アルカティーブ
アレッポ大学でマーケティングを専攻する学生であった。戦争の恐怖を記録することを決意し、市民ジャーナリストとなった。
周囲に日常的に起こる惨状を、壊滅的な政府の包囲戦に6年間もとどまり紛争の最も記憶に残る映像を収録。
2016年12月にアレッポから家族とともに避難。現在は夫のハムザと二人の娘と一緒にロンドンに在住。
見どころ
女性の視点、母の視点の戦場
序盤は彼女のスマートフォンで撮影された映像で本編が展開されるのですが、独学で学んだ撮影方法ゆえかいささか見づらいのです。しかしそれが撮影者の本能で収録された映像だけにもの凄いパワーを感じました。
女性視点のため、ドキュメンタリーなのですがきめが細かいんですよね。常に戦火で緊迫している男性の表情を、そばで付き添うような映像で観る者のこころをひきつけます。
そして戦火が勢いを増すさなか、彼女は母になります。
子供をあやしていて、あどけない笑顔を見せる娘サマの映像の後ろで砲弾による爆音がこだましているのには胸を打たれます。
負傷した妊婦の方(ワァドさんではない方)が病院に送られて、そこで陣痛が始まってしまう映像は本作で最も印象に残る光景でしょう。
まとめと総評
遠く離れたシリアという国の惨状は、なかなか日本には届きません。
我々はその情報を自分の意志で“取りにいかなくては”ならないのがもどかしいです。
そういう私達のために行動をおこしたジャーナリストの山本美香さんと後藤健二さんも命を落としてしまいました。
本作を鑑賞して、何か行動をおこさないでもまずはシリアの状況を知る事が大事だと感じました。普通にテレビのニュースを流し見していても報道されない分野だと思いますのでね。
そして映像から何かを感じたら、まずは毎日の平和に感謝して、命ある限り時間を無駄にする事無く日々の生活を全うしたいものです。
そんな訳で本作の評価は、、、
☆☆☆☆
いま出来ることを精一杯がんばろうと思います!
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