人間の時間
原題:Human,Space,Time and Human
2019年 韓国
監督:キム・ギドク
上映時間:122分
鑑賞日:2019/7/17
劇場:シネマ・ジャックアンドベティ
その監督独特な世界観を持つ「変な映画」。
こういう作品を世に送り続けている監督さんですが、みどりが思いつくところですと、古くはデビッド・リンチ。『イレイザー・ヘッド』や『ブルーベルベット』など傑作揃いですよね。
大好きなギャスパー・ノエもそう。
最近ですと『ミッドサマー』(みどりの感想はコチラ)のアリ・アスター監督もこの枠に入ってきそうです。以前から気になっていた本作の監督、キム・ギドク監督もアジアを代表する変な映画を沢山撮っている監督さんなのではないでしょうか。
実はみどりは今回の『人間の時間』がキム・ギドク監督初見作品。
日本でも大人気でした(既に過去形か…)チャン・グンソクの演技も初めて観るという事で楽しみにしていました。
あらすじ
休暇へ向かうたくさんの人々を乗せ、退役した軍艦が出航する。
乗客には、クルーズ旅行に来た女性(藤井美菜)と恋人のタカシ(オダギリジョー)、有名な議員とその息子(チャン・グンソク)、彼らの警護を申し出るギャングたち、謎の老人(アン・ソンギ)など年齢も職業も様々な人間達がいる。大海原へ出た広々としだ船の上で、人々は酒、ドラッグ、セックスなど人間のあらゆる面を見せる。荒れ狂う暴力と欲望の夜の後、誰もが疲れて眠りにつき、船は霧に包まれた未知の空間へと入る…。
主要キャスト
イヴ:藤井美菜
恋人タカシと船に乗船。その後恋人は殺され、議員やギャングたちにレイプされる。
アダム:チャン・グンソク
議員の息子。父と違い誠実で不義理を好まない性格だが、次第に自分の欲望を抑えきれなくなる。
謎の老人:アン・ソンギ
船から塵や土を集めては種を植え、それを栽培する謎の老人。
見どころ
本作鑑賞のルール
初めに申し上げると本作は寓話です。
こう断定しないととてもじゃないですが、本編をまともに鑑賞する事はできないでしょう。
イヴと恋人タカシは日本人で当然日本語を喋りますが、他の韓国人とも普通に会話ができます。でもなぜかチャン・グンソクがイヴと話す時は日本語なんですが…。
登場する女性は全員売春婦かレイプされる立場。
雑な暴力シーンもそれはそれで恐く、劇中の会話も少し「ん?」となるシーンも多いですが、そこは一つのファンタジー作品を鑑賞しているつもりで観てみて下さい!
藤井美菜の強さとチャン・グンソクの弱さ
この二人のコントラストがとっても良かった!
二人の役名はアダムとイヴなんですよね。作品をマクロ的な視点で観るとこの意味がよく解るという。
藤井美菜さん演じるイヴ、男達にレイプされながらも女性の儚さの裏付けのような母性がキッチリ出ていました。
そしてチャン・グンソク演じるアダム。議員の息子という毛並みも良質で一見良識ある青年なのですが、彼がまた弱くクズなのです…。
他の批評家の方も仰っていましたが、よくこの役を彼が引き受けたと。
それはそれで拍手を送りたいです。
まとめと総評
ディストピアムービーのお手本のような『人間の時間』。
本編は4つに章切りされていまして、テンポよく話が進み、個人的には大変興味深く鑑賞しました。
あの船が人間の業の縮図のような舞台と化すのを、あくまで現実的に表現されていたと。
しかしいささか腑に落ちないとこもありまして、このキム・ギドク監督、#me too運動の煽りというか、自業自得なのですが、色々女性関連で問題を起こしておりまして本国韓国では上映できないという異例の事態になっているみたいなんです。
監督の女性観を反映された作りかどうか定かではないですが、なんとも短絡的な思想が盛り込まれ過ぎてやしないかと…。
まあ、潔さは感じますね。実際男の思春期なんて女性をああいう風にしか見てないですし。(あくまで個人的意見)
でも歳を重ねていくと、もっと多面的に見れるようになるのが人の常かと。
やはり女性観て人それぞれかと思いますが、本作ではどうしても性の対象1本で女性を観ている感じがして、不快に感じる方もそれは多数おられるかと思います。
そんな訳でみどりの評価は、
☆☆☆
監督の変な作品(褒め言葉)、これからも期待しています!
以前のキム・ギドク作品といえばコレ ↓
色んな賞をとりましたね。