家族を想うとき
原題:Sorry We Missed You
2019年 イギリス フランス ベルギー
監督:ケン・ローチ
上映時間:100分
鑑賞日:2020/4/5
劇場:横浜シネマリン
支配人みどりは何回か転職経験がありまして、その間、いわゆる求職期間は失業保険で食いつなぐ日々。面接で不採用になる度の不安は例えがたい苦痛に襲われるわけです。
そこで考えてしまうのは、
「全く贅沢もしていないのに、ただただ呼吸しているだけでなんでこんなにお金がかかるの…?」
という事。
家賃に住民税に光熱費。食費に生活雑貨を含めるとそれなりの金額がかかるのが世の常。
その上に保険なんて正直払ってられないですよね。
こんな世の中の“あたりまえ”の不条理に鋭くメスを入れる作品が本作『家族を想うとき』です。
ではあらすじからどうぞ。
あらすじ
フランチャイズの宅配ドライバーとして独立を決めたリッキー(クリス・ヒッチェン)は、夢を叶える為にもがいていた。それは10年前、銀行の取り付け騒ぎで住宅ローンが流れ、職を転々としながら懸命に働いてきたが、安い給料で人に使われるのはウンザリしていたのだ。
1日14時間週6日、2年も働けば夫婦の夢のマイホームが買えるという今回の仕事はフランチャイズで各ドライバーが個人事業主という形態。
事業のシステム上、本部の車を借りるよりも買った方が得だという事で、介護の仕事をしている妻のアビー(デビー・ハニーウッド)の車を売る事にする。
かくして宅配ドライバーとして家族の夢に向かって邁進するリッキー。しかしそれは決して平たんな道程では無かった…。
主要キャスト
リッキー:クリス・ヒッチェン
家族想いで夢のマイホームの為に、フランチャイズの宅配ドライバーの仕事を始める。
サッカーのマンチェスターユナイテッドのファン。
アビー:デビー・ハニーウッド
介護の仕事をしているリッキーの妻。リッキーの新しい仕事の為に、仕事で使っていた車を手放すことに。その後はバスを使って仕事をこなす。
セブ:リス・ストーン
16歳のリッキーの息子。学校をサボって壁のグラフィティに熱中している。
ライザ:ケイティ・プロクター
12歳のリッキーの娘。父親が大好きで聡明。
見どころ
これは誰もが直面している恐怖
描かれている内容は、映画的な特別な世界とか、寓話的要素は一切皆無で、どこの世界にもある話。しかしそんないわば“当たり前”の状況をここまでスリリングに描けるのは監督のマジックだと思います。そしてそれがとても恐い!
家族を大切に想うからこそ始めた仕事がまさかこんな事になるなんて、初めは誰もが予想しなかったはず。
しかし悲しいのはそれが現実という事。本当に当たり前になっているから我々はそんな世の中の狂気を“普通”と認識してしまっている訳でして、それを気づいた時にこの作品が我々に指し示す恐怖となって襲い掛かるのです。
まとめと総評
お金って本当に大事ですよねぇ。そしてそれを得る手段であるお仕事も本当に大事。
鑑賞後しみじみと思いましたよ。
だってお金さえあれば劇中に起こるような事は無かったわけですし。
そんな情けない事を言っているみどりもいい歳して未だ独身。きっと家族の事を想うとリッキーのような気持ちになると感じてしまいます。
『わたしはダニエル・ブレイク』で一度は一線から退いた監督が、再度メガフォンを取って我々に訴えたいと願った本作。
因みに原題の「Sorry We Missed You」というのは宅配便の不在票の事です。
監督はインタビューでこう仰っていました。
最終的には、観客の方々が本作の登場人物に信頼を寄せ、彼らのことを思いやり、彼らと共に笑い、彼らのトラブルを自分のことと思わなかったら、この映画には価値はありません。
彼らの生きてきた証が本物だと認識されることが、観客の琴線に触れるのです。
鑑賞後にずしりと来る言葉でした。
そんな訳で今回の評価は、、、、
☆☆☆☆
家族の為に頑張っている人全員に観てもらいたいです!
一応監督の引退作。こちらも有名ですな ↓