燃えよスーリヤ!!:原題(The Man Who Feels No Pain)
2018年 インド
監督:ヴァーサン・バーラー
ボリウッドという言葉が使われて久しいですが、支配人みどりはこれまでまともにインド映画を観た事がなかったです。
いや、毛嫌いしているつもりは無いのですが、これまでチャンスが無かったというかね。このボリウッドという言葉、正確にはヒンズー語圏内で作られた映画を総称して言うのですが、そもそもこのジャンルの火付け役になったのは、そう、日本でも大ヒットをぶっ飛ばした1995年の「ムトゥ 踊るマハラジャ」だったと記憶しております。
みどりの親友が当時強く勧めていたのですが、いつかは観てみようとのらりくらりしていたら元号も令和になっていました。
まあこんなよもやま話をふと思い出していたら、本作公開のニュースが飛び込んできたわけでして、早速観てきました。ではあらすじを、
あらすじ
スーリヤ(アビマニュ・ダサーニー)は生まれながらにして普通の子達とは違っていた。それは無痛症という事。
生まれつき『痛み』を感じない彼は学校では当然の如くイジメの的となる。スーリヤ本人は蹴られても殴られても父親から言いつけられた通り「イテ!」と演技をしているだけで、さほど気にしている様子は無いのだが、いつも決まってスプリ(ラーディカー・マダン)が助けてくれた。そんな正義感が強い彼女にも悩みがあって、それは酒びたりの父親から暴力を受けている事。スーリヤと仲良しの祖父から勧善懲悪を叩き込まれていた彼は、彼女を助けるためにスプリの父親をこらしめようとする。しかし子供のあさはかな計略は、警察が動くほどの事故に発展してしまった。そんなごたごたでスーリヤとスプリは離れ離れになってしまう。
数年が経ち、スーリヤは青年になっていた。ビデオショップで貪るように観ていたカンフー映画から体得していた格闘技。そして生まれつき痛みを伴わない己の肉体を武器に街のチンピラを一掃しようとした矢先、あるトラブルに遭遇する。しかしそこに颯爽と現れたのは、幼い頃離れ離れになったスプリであった…。
キャスト
スーリヤ:アビマニュ・ダサーニー
先天性無痛症を患っている為、常に水分を摂っている。彼が背負っているバックパックは実は大きな水筒。
大量に観ていたカンフー映画の中から、「百人組手」という作品に感銘を受け、空手マスターになる事を決意する。
スプリ:ラーディカー・マダン
スーリヤの幼馴染み。片足の空手の達人マニと出会い、自分も体術を会得する。
母親の病気の治療代をどうするか悩んでいる。
空手マニ:グルシャン・デーヴァイヤー
スーリヤに行く道を決定付けた「百人組手」の達成者。片足で松葉杖で戦っている。
見どころ
スーパースローが心地よい
黄金期のジャッキー・チェン作品と比較すると、それは先代には叶わないのですが、本作ならではのスロー映像が実に気持ちいい!
こちら香港産のカンフー映画よりも明らかにスローなんですよ!
スーリヤの華麗なローリングソバット、攻撃を食らった敵のほほ肉の歪み、ほとばしる水しぶき。これらがスーパースロー映像で実に美しく撮られています。
曲は詩を見逃すな!
ボリウッド作品は歌とダンスが付きもの。本作にはダンスシーンこそ無いのですが、秀逸な楽曲が随所に収録されていまして、これらは全てそのシーンの登場人物の心情を歌っています。
ただのBGMなのかと思うなかれ、詩の字幕をキチンと理解しなければ、その後のストーリーが解らなくなりそうなくらい重要なので注意が必要です。
グルシャン・デーヴァイヤー実は二役
みどりはパンフレットを読むまで判らなかったのですが、空手マニとラスボスでもあるマニの兄ジミーが実は同一人物が演じています。もう全く違うので心底驚きました!ボリウッド俳優恐るべし!
まとめと総評
インドでカンフー映画。本家へのリスペクトは相当なもので、監督はスタッフ達にブルース・リーとジャッキー・チェンの著名作品を観るように勧めていたとのこと。
スプリのスカーフを使った殺陣は、ジェット・リー(当時はリー・リン・チェイ)の九節弁の動きを彷彿させました。
そして本作は凄く明るいんですよね。これがみどりの一番の印象。
作品の中にあるエッセンスってどれも結構暗いんですよ。
生まれつきのハンディキャップ、父親からの虐待、イジメ、はたまたハンディキャップを抱えた子に向けられる親の暴走などね。
そんな暗い事案を全て作品持ち前の明るさで吹っ飛ばしてくれる。そんな不思議な作品でした。
最後にもう一つ。オープニングのタイトル表示。
これ古い映画ファンならどなたも頷いてくれると思いますがこれが懐かしかった!
あの無音状態で静止画のあのタイトル表示です。もういつから無くなったのか忘れるくらい、いまでは配給会社のムービーから入るでしょ?
このモンド感が凄くいいのです。という訳で今回の評価は、、、
☆☆☆☆
一つ言っておきますが、本作をアクション目当てで観ようとすると肩透かしをくらいます。
人情活劇というくくりでご鑑賞下さい。