ボヤンシー 眼差しの向こうに
原題:BUOYANCY
2019年 オーストラリア
監督:ロッド・ラスジェン
上映時間:93分
鑑賞日:2020/8/14
劇場:kino cinema横浜みなとみらい
え~、よく闇金の方からの返済に困ると、彼らはお仕事を斡旋してきますよね。
女性は風俗で男性はマグロ船というのが一般的かと。
こんにちは!支配人のみどりです。
そのマグロ船も最近の不漁のせいでてんで仕事がないとか。しかも衣食住はタダでそこそこ高給なのでやりたい人が殺到し、現在では順番待ちだそうです。
そんな闇金の方々が斡旋するお仕事ですが、最近ではベーリング海峡でのカニ漁がポピュラーだそうですね。凍てつく寒さの中での作業は命の保証が無いため、動けなくなるまで酷使されるとか…。なんとも恐い話ではありますが、本作もそういう労働の闇を描いた問題作でしてまずはあらすじからどうぞ。
あらすじ
カンボジアの田舎で決して裕福ではない14歳のチャクラ(サーム・ヘン)は多くの兄弟と一緒に暮らしていた。
将来を期待されている兄とは違い、ただ仕事に明け暮れる日々。もっとお金を稼ぎたいチャクラは友人から仕事を斡旋するというブローカーを紹介され、誰にも相談することなく早朝明け方に家を出る。
仕事内容は船上での漁、しかも仕事というよりかはほとんど奴隷であった。1日22時間働き供給される食事は冷えた白米のみ。当然この環境下でまともな精神を維持できる者は少なく、船長に歯向かう者、衰弱していく者も後を絶たずその者たちは見せしめに殺され海へ捨てられていく。なんとか自我を保っていたチャクラも徐々に暴力的になっていく。彼が最後に決断した事とは…?
主要キャスト
チャクラ:サーム・ヘン
学校には通えず、兄弟の中でも労働の担い手。その生活から脱するために友人から紹介された“仕事”に単身行ってしまう。
※本作のパンフレットの販売はありませんでした。
見どころ
秀逸な音と表情の演出に注目!
集められた労働力はカンボジアを初めミャンマーからの人もいて、そして雇い主はタイ人。物語の設定上、登場人物同志の言葉が通じないせいか劇中、会話というのはほとんどないのが本作の特徴。音と演者の表情の演出が際立っているのです。
みどりはオープニングの演出が凄く好きで、それはチャクラの足音から映画が始まります。
ただの足音ではなくて、あのビーチサンダルが歩く度に足の裏を打つ“ペタッペタッ”っていう音あるじゃないですか。そして段々映像が明らかになっていき、荷物を持ったチャクラが映し出される。この数秒だけで彼が貧しく、そして現在の状況に満足いっていないと我々に伝える演出は素晴らしかったです!
そして最後のチャクラの表情ですね。このラストショットは胸を鷲掴みにされましたよ。
このシーンを観れば本作の邦題「眼差しの向こうに」という言葉の意味が凄く理解できることでしょう。
まとめと総評
リゾートを彷彿させるきれいな海の上で行われている地獄絵図。この相反する二つのコントラストが不穏な違和感を醸しだして、劇中の狂気を倍増していました。
エンドロール直前、現在の違法労働の実態が説明されていて、本作はあくまでフィクションですが、描かれている内容は決して作り事ではないという説明も説得力があります。
世界にはまだ戦争以外でも闇の部分がこんなにも堂々と行われている事にそら恐ろしさを感じてしまいます。
そんなわけで本作の評価は、、、
☆☆☆
暫く海鮮料理が美味しくなくなるかもです…。
日本人ならまっさきに連想してしまうのが、プロレタリア文学の代表作『蟹工船』。
下手なホラー映画よりも恐いです ↓