アルプススタンドのはしの方
2020年 日本
監督:城定秀夫
上映時間:75分
鑑賞日:2020/8/16
劇場:イオンシネマ座間
西暦2020年8月、実は個人的に凄く悲しい事が起こりまして。
普段みどりはよほどの事が無い限り周りに悩みを吐露する事もせず、解決は自分一人でする実は暗いタイプなんです。しかし今回の一件は流石に堪えまして、友人に告白して悩みを聞いてもらい沢山の優しい言葉で慰めてもらいました。
それでもまだ絶望から立ち直る事ができず、あともうひと押し何かないかと選んだのが今回の『アルプススタンドのはしの方』という作品。
こちら元は演劇で公演されていた作品。それも2017年の高校演劇の優勝作品。
兵庫県東播磨高校の演劇部顧問である藪博晶さんという先生が作った物語で、母校が甲子園に出た際、観戦しに行かれた時に思いついたとか。
とりあえずあらすじからどうぞ。
あらすじ
「しょうがないよ」
顧問に肩を叩かれ立ちすくんでいるのは演劇部の安田あすは(小野莉奈)。
部員の一人がインフルエンザにかかり急遽全国大会の出場を断念しなくてはいけなくなってしまったのだ。
高校野球夏の甲子園大会第一回戦。
夢の舞台でスポットライトを浴びている選手たちを観客席の端っこで見つめている冴えない4人。夢破れた演劇部の安田と田宮(西本まりん)、遅れてやってきた元野球部の藤野(平井亜門)、帰宅部だが成績はトップの宮下(平井亜門)。
「しょうがない」と最初から諦めていた4人だったが、それぞれの想いが交差し、先の読めない試合展開と共にいつしか熱を帯びていく。
主要キャスト
安田あすは:小野莉奈
演劇部。自分で台本も書いて演劇に打ち込んできたが、部員の一人がインフルエンザにかかり全国大会の出場を断念する事になる。
田宮ひかる:西本まりん
安田と同じ演劇部。仲間想いだがハキハキしている安田とは違い少し天然キャラ。
藤野富士夫:平井亜門
元野球部。いくら練習しても部のエース園田を超える事が出来ず、野球に費やす時間が無駄と判断し退部した。
宮下恵:平井亜門
ずっと成績学年トップをキープしていたが先日の試験で2位になる。その相手は自分が密かに想いを寄せている野球部のエース園田の彼女の久住智香。
見どころ
秀逸な会話劇
本編はタイトル通りほぼ野球のスタンド席で行われている、いわばソリッドシチュエーションなのです。
野球場が舞台なのは間違いないのですが、なんと一度も選手はおろかボールやバットも画面には出てきません。
それでも“カキーン”という音と歓声、そして4人の会話で我々は試合がどういう展開になっているのか手に取るように解るところが素晴らしい。
さすが演劇が元になっている点。
そしてこの安田と田宮が野球を全く理解していないというのがまた面白い。
「なんで打ったボール取ったのにランナーが走ってるの?」
「普通アウトだよね?」
とキャッチアップのルールを知らないというね(笑)
みどりが一番笑ったやり取りが、
藤野「演劇の全国大会って何するの?」
安田「・・・演劇!」
こういう一見何気ない会話が登場人物を次第に愛すべきキャラクターにしていく展開が本作一番のエッセンスとなっているのです。
映画版ならではのしかけも
冒頭の絶望しているあすは。
そして本編エンディングの後日談、演劇版を鑑賞された方も違った楽しみができる事でしょう。詳細はネタバレになるので割愛しますがエンディングは映画版だけのミスリード演出となっています!
まとめと総評
「しょうがない」事で何かを諦めてしまった4人に観客は自分を投影し、最後にはいつまでもくよくよせず、未来に向かってまた頑張ろうと勇気を貰えます。
みどりは本作に出会えて本当に良かったと思っています。
近い作品といえば真っ先に思い出したのは『桐島、部活やめるってよ』。
これ面白かったですよねぇ。あれだけ本編で「桐島」の名前が出てきたのに、本人は一度も登場しないのが斬新でした。この『アルプススタンドのはしの方』も園田と矢野というキーパーソンが出てきますが、本人達は一度も登場しません(笑)
しかし彼らがどんな人物か理解できるのが本作の脚本が秀逸な点なのでしょう。
というわけで評価は、、、
☆☆☆☆☆
久しぶりの満点!
この作品がダメだったといわれている方のご意見に、
「舞台が甲子園なのに、撮影地は明らかに甲子園ではない!」
という声が多かったのですが、みどりはそんな事全く気にならないくらい物語を楽しむ事ができましたよ。何せこのみどりも野球全く解らない人間なのでね(笑)
因みに当記事、冒頭の画像にあります通り撮影地は平塚球場で、本編に登場されている吹奏楽団は平塚を本拠地として活動されている「シエロウインドシンフォニー」なのです。
地元の方は是非ご鑑賞くださいね!