テアトルみどり座

映画の感想、見どころを気ままに紹介しています。

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甘ったれた我々に水平チョップ!『37セカンズ』感想と見どころ

37セカンズ:原題(37 seconds)

2020年 日本、アメリカ

監督:HIKARI

鑑賞日:2020/2/11

劇場:kino cinema横浜みなとみらい

 

一番好きな映画は?との質問に答えづらいのは、この支配人みどりだけではないはずでして、せめてジャンルで分けて回答したいものです。

しかし、

 

今までで一番泣いた映画は?

 

との質問には迷わず「クールランニング」と答えてきました。

ご存知ジャマイカのボブスレーチームを描いた作品でして、1993年公開、監督はジョン・タートルトーブさん。

もりもりのコメディ作品のはずですが、これ本当にみどりの心を打ちまくったんですよねぇ。

そして時は流れ2020年、実に27年ぶりにこの記録を打ち破る作品が出てきてしまいました。

いやあとんでもない監督さんが登場してしまいましたよ。HIKARIという名の女性監督で本作が長編デビュー作。ではあらずじから、

 

 

あらすじ

ユマ(佳山明)は脳性麻痺で生まれてきた。現在23歳、職業人気少女漫画家のゴーストライター。

両親は離婚していて、母親(神野三鈴)と二人暮らし。母はユマの介護を生きがいとしていて、食事の用意は勿論、お風呂の世話から通勤まで付き添っていて、少しユマは息苦しく感じていた。ユマに自我が芽生えてきた。そんなユマは自分が書いたオリジナルの漫画を馴染みの編集者に見てもらうが、ゴーストライティングをしている漫画家に作風が似ていると一蹴されてしまう。傷心気味に公園を車椅子で移動していると、捨てられていたエロ漫画を見つける。その中から片っ端に持ち込み依頼の電話をかけるユマに、一社原稿を見せてくれと回答した雑誌があった。SFのエロ漫画を仕上げてその出版社へ原稿を持ち込むことに。

編集長自ら原稿に目を通してもらって、ユマに投げかけられた言葉は、

「あんたヤッた事ある?だからセックス。」

この言葉をきっかけに、ユマの止まっていた時計が大きく動き出した。

 

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パンフを買う時に、「<さんじゅうなな>セカンズのパンフを下さい」と言ってしまった事に少し後悔。

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大東駿介イケメンでしたぁ…


 

キャスト

ユマ:佳山明

脳性麻痺のハンディキャップを持っていて、車椅子で生活している。絵を描く才能に恵まれていて、アイドル並みの容姿を兼ね備えた漫画家サヤカのゴーストライターをやっていて給料を得ている。父親の記憶はない。

 

恭子:神野三鈴

ユマの母親。ユマを献身的に介護している。いつも彼女が事故に合わないかと心配する毎日で、人形作りの内職をしている。

 

舞:渡辺真起子

障碍者専門の風俗嬢。ラブホテルで会ったのをきっかけにユマの一番の理解者となる。

 

俊哉:大東駿介

介護福祉士。いつも舞にこき使われている寡黙な青年。

 

 

 

見どころ

俳優陣の表情の演技に注目

とにかく登場人物の表情の演技は秀逸。主演の佳山明さんは実際に脳性麻痺の方でして、本作が演技初挑戦のこと。

もうこのひとのニカって笑う表情が本当に愛おしいのです。

もう見た目だけの整形メイクなんて裸足で逃げ出すくらい眩しい!

インスタ蠅の小娘達に「時計じかけのオレンジ」ばりに瞼を固定して見せつけてやりたいですね。

他にも皆さん目に力がこもっていてどれも捨てがたいのですが、板谷由香さん演じる編集長の藤本。仕事に厳しく、妥協を許さない。オフの日はホットヨガで汗を流し、安いワインは飲まないという情報をその目を見るだけで相手に供給。(←ここまでみどりの妄想)

彼女が例の言葉、

「性体験が無いのにリアルな作品は作れないでしょう!」

の言葉には、みどりは思わず、

「ならば著名な推理小説家は全員猟奇殺人鬼か?池波正太郎は剣豪で辻斬りの常習犯でシリアルキラーなのかぁぁ!!

と叫びそうになりましたよ。それくらい観る者全てを引き込む魔力のようなものを感じました。

 

話の転調が心地よい

このお話、章切りができるくらい綺麗にストーリーが転調していくんですよね。

予告を見るだけで大まかな筋は予想していたつもりだったのですが、あの底意地の悪いユマをゴーストライターとして雇っていたサヤカに一泡吹かせて大円団で終わるのかと思いきや、実際はそんな『浅はかな』お話ではなかったという。凄く気持ちいい裏切り方をしてくれています。

 

Chaiの曲ぴったりだね!

個人的に注目しているポップユニットChaiが楽曲を提供しているのですが、タイトルは「N.E.O.」。ざっくり説明すると、「あんたの個性は誰にもマネできない、だから自身もちな!」って詩です。ユマが出会い系サイトで色んな男達と出会うシーンでかかるのですが、この曲と場面がマッチしすぎていて狂気すら感じてしまいます。

 

 

まとめと総評

佳山明さんの体当たり演技にもう脱帽。ご自身も重度の障害を持ちながら、障害者が抱く悩みも包み隠すことなく演じきる力強さに勇気をもらっただけではなく、自分なんてまだまだ甘いと自己嫌悪に陥るくらいの衝撃を受けました。

所々アニメが差し込まれたり、綺麗な風景の無音描写があったり監督自身のカラーが出るシーンもあったのですが、失礼ながら、いや決して卑下するつもりも毛頭ないのですが、それが引き立つ一片として捉えることが出来ず、作品全部をマクロ的に鑑賞できる一本でした。

もう既にこの「37セカンズ」という物語に没頭しすぎて、その後のユマや、他の登場人物はあの後どうしているのかと気になる始末

本当にいい作品ってそんな気にさせますよね!そうですよね!

 

ただただこれは作品自体に言っている訳ではないのですが、このタイトルの意味はプロモーションでは語ってほしくなかった!

作中ユマ自身が語るシーンがあるのですが、ここで初めてタイトルの意味を観たもの全員が知る展開が良かったと思いまする…。

なので当記事ではその真意は書きませんので悪しからず。

 

という訳で今回は文句無しの、

 

☆☆☆☆☆

 

☆5つでは足りないくらいでございます。

下手な自己啓発本を読むくらいなら、本作を観た方がよっぽどタメになりまっせ!

 

 

↓キャスト紹介のページの充実度がピカイチ!

気になった俳優さんの情報があますところなく紹介されています。

 
↓当分はこれに収録されている「N.E.O.」を聴く度に思い出し泣きをしてしまうでしょうなぁ。困ったなぁ…。
 

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