アフガン・レポート:(原題)Kajaki
2014年 イギリス・ヨルダン合作
監督:ポール・ケイティス
映画のテーマには事欠かないですが、近年の戦争映画ってやはり変わりましたよね。
支配人みどりが昔に観た戦争映画は、必ず両国で『善人・悪人』に分かれていました。
戦争に正義も何もないのが現実ですが、どうも勧善懲悪の流れが確かにあったと思います。
それが近年は、スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」あたりなのでしょうか、よりリアリティを追求しカッコよさなんて払拭して、戦争の虚しさを前面に押し出す作風が増えた感があります。
さて、今回の作品は少し異色な戦争映画「アフガン・レポート」という作品。実話です。
あらすじ
2006年アフガニスタン カジャキダム
ここにイギリス軍のある小隊が、タリバン制圧の為に駐屯していた。高台360度見渡せる監視施設で、現時点では銃声が轟くこともない比較的安全な場所。
ある日、敵に動きが見られた。
射程距離の小高い丘の確保のために山を下ることにするステュー(ベンジャミン・オマホニー)は二人の隊員を連れていった。
“ヤギの道”と呼ばれているルートを辿る三人の隊員。谷底にたどり着いた時、無線確認を促すステュー。
その瞬間、彼の足元が突如爆発。三人がいた場所は無数の地雷が埋まっていた場所だったのだ。
現場は正に地獄。勾配の為怪我人を駐屯地まで搬送することもできない、無線の感度は最悪、救助ヘリの着陸スペースもなし、限られた医療器具、そして何より目に見えない無数の地雷が不気味に息をひそめる…。
キャスト
タグ:マーク・スタンリー
軍医。ステューが負傷した時に現場へ駆けつける。医者として黙認できない事だが、重症のステューがタバコを欲しがった時に、ためらいなく与える人情肌の性格。
ステュー:ベンジャミン・オマホニー
地雷の被害者。特殊部隊への入隊を希望していた。
見どころ
突如一変する世界観
前半は和やかなムードが一面に出ていまして、ここが戦場と忘れるくらい。ポルノ雑誌を楽しんだり、筋トレに励んだりと戦場に平和は無いですが、そんな平穏な場所だったのでしょう。しかし事態が急変すると、実は修羅場はすぐ側にあったと思い知らされます。
ここが異色たるゆえん
火を吹く銃火器、地響きを鳴らして迫りくる戦車、群れでおそいかかる敵兵などの演出は一切ナシ!
それでいてこの緊迫感はある意味恐ろしいです。地雷という目視しずらい兵器と、救助ヘリが着陸できない場所で戦う兵士達。いや、考えると彼らは一体何と戦っているのかすら解らなくなります。
エンディングに何を想うか
エンドロール前に、本作の登場人物の現在が紹介されるのですが、そのほとんどの方が部隊に復帰されていました。あんなに恐ろしい目に遭いながらも、国の為、平和の為に勤しむ姿に敬服します。
まとめと総評
『地雷』という兵器の恐ろしさを痛感できる作品です。
調べると、この兵器の狙いは、あえて殺傷能力を抑えて、重症を負わせる事が狙いとのこと。そうすれば、負傷した味方の兵士が救護に周り、必然的に全体の足止めを最小限の経費で賄えるというね。
そして本作で描かれている戦争の相手はタリバンなのですが、この地雷を仕掛けた、いや正確に言うと『置いていった』のはロシアなのです。鑑賞後色々な事を深く考えてしまいますよね。
評価は、
☆☆☆
アフガニスタン。風景はとても素晴らしいところなのに…。